利回りの落とし穴と正しい見方

取得戦略

不動産投資を始めると、まず目に入るのが「利回り◯%」という数字。
でも、この利回り──本当に信用できますか?
実は、「利回り」には種類があり、内容をきちんと理解しないと、見かけほど儲からない物件に手を出してしまうリスクもあるんです。


特に初心者は、表面利回りの高い物件に飛びついて後悔するケースも少なくありません。

本記事では、不動産投資の基礎知識として知っておきたい利回りの種類・使い分け・注意点を、実務経験者の視点でわかりやすく解説します。


表面利回り(グロス利回り)の基本

計算式: 年間家賃収入 ÷ 物件価格

もっともシンプルな利回り指標で、不動産広告や販売図面でよく見かける形式です。「表面10%」「グロス8%」などと言われることもあります。

表面利回りの特徴

  • 満室想定の年間収入をもとに計算(空室やコストは考慮しない)
  • 複数物件のざっくり比較に便利
  • コストの見積もりが入っていないため、“ごまかし”が効きにくい

注意点

不動産投資に少し詳しい人の中には「表面利回りは意味がない、ネット利回りで見るべき」と主張する方もいます。
しかし、実務では**物件の第一スクリーニング(候補の絞り込み)**に使う場面も多く、表面利回りが役立つケースも少なくありません。


ネット利回り(NOI利回り)の基本

計算式:(年間家賃収入 − 年間コスト)÷ 物件価格

ネット利回りは、実際に手元に残る「純収益」に基づいた指標で、物件の本当の収益性を見極めるために欠かせません。
そのため、プロの投資家や金融機関では、このネット利回りを重視するのが一般的です。

ネット利回りを正しく把握するには、以下のような代表的なランニングコストを含めて考える必要があります。

  • 賃貸管理費(PMフィー)
  • 建物管理費(清掃・点検等のBMフィー)
  • 修繕費、原状回復費
  • 共用部の水道光熱費
  • 固定資産税・都市計画税
  • 火災・地震保険料 など

注意点

販売資料に掲載されているネット利回りは、コストが甘めに見積もられていたり、一部が意図的に省かれていることもあります
そのため、ネット利回りを鵜呑みにするのではなく、自分で項目ごとに確認・再計算することが大切です。


利回りが高すぎる物件には要注意!

表面利回りが10%以上など、極端に高い物件には以下のような“カラクリ”が隠れている可能性があります。

  • 家賃水準が相場より高すぎる
     → 売却目的で知人に高額で借りさせる「利回り偽装」のリスクあり。
     → 入れ替え時に大幅な賃料ダウンが起こる可能性も。
  • 駐車場収入に依存している
     → 特に機械式駐車場は稼働率が低く、維持費・修繕費も高額。
  • 自販機・アンテナ収入が過大に見積もられている
     → 実際は数千円〜1万円/月程度なのに、利回りを0.5〜1%上乗せして見せているケースも。
  • 原状回復費用の回収想定が非現実的
     → 退去時に回収できるクリーニング代などはせいぜい数万円レベル。見積もりが過大なことが多い。
  • コスト項目が省かれている
     → 固定資産税や保険料、修繕積立などが「意図的に除外」されていないか要チェック。

収支計算ミスを防ぐダブルチェック方法

利回りを見て「よさそうだな」と感じても、想定収支に見落としや甘さがあれば、実際の運用で大きくズレが生じることになります。

ここでは、不動産ファンドの現場でも使われている、シンプルだけど効果的な2つのチェック項目を紹介します。
物件資料を見ながらでも簡単に確認できるので、ぜひ習慣にしてみてください。

1. 専有単価をチェックする

計算式:物件価格 ÷ 貸室の専有面積

まずは、その物件が**面積当たりで高すぎないか?安すぎないか?**を確認しましょう。

例:

  • 同じエリア・築年数の分譲マンションの坪単価と比較
  • 近隣の一棟投資物件の価格水準と比較

もし「割高な単価なのに利回りも高い」となれば、想定賃料が相場より高く見積もられている可能性が疑われます。
こうしたケースでは、家賃査定が適正かどうか、再検証が必須です。

2. 経費率をチェックする

計算式:年間総費用 ÷ 年間総収入

ネット利回りの信頼性を判断するうえで、経費率の水準を見ることも非常に重要です。

参考水準(目安):

  • 都心部の賃料単価が高いエリア:20%前後
  • 地方や賃料単価が低いエリア:30%前後

経費率が明らかに低すぎる、もしくは近隣物件と大きくズレている場合、どこかの費用が抜けている、または収入が過大になっている可能性があります。

物件資料の数字だけで安心せず、「この物件、経費率に違和感ないか?」という視点を持ちましょう。


まとめ|利回りは「種類の使い分け」が重要

利回りには種類があり、使い分け方を間違えると、見かけの数字に騙されるリスクがあります。

  • 表面利回り:物件間のざっくり比較に使う。広告に出てくる数字。
  • ネット利回り:実際の収支を見るために使う。ただし、販売資料の数字は鵜呑みにしない。

不動産投資では、利回りそのものよりも「中身」をどれだけ自分で検証できるかが大切です。
見かけの数字に安心せず、コストや収入の根拠を自分の目で確かめながら、堅実な投資判断をしていきましょう。

それでは、またひみつ基地で!

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