不動産投資で知っておきたい「減価償却」とは?節税の仕組みと注意点

不動産投資とは

不動産投資を学ぶと、必ず耳にするのが「減価償却(げんかしょうきゃく)」という言葉です。
専門用語っぽく聞こえますが、実はキャッシュフローや税金に直結する、とても重要な仕組みです。

この記事では、初心者の方に向けて

  • 減価償却の基本
  • なぜ節税になるのか
  • 注意すべき落とし穴

を順番に解説します。


減価償却とは?

不動産の建物設備は、時間がたつと古くなり、少しずつ価値が減っていきます。
この“減っていく価値”を、毎年の経費として計上するルールが「減価償却」です。

  • 対象になるもの:建物本体、エレベーター、給湯器、エアコンなど
  • 対象にならないもの:土地(価値が減らない前提のため、償却不可)

ポイントはここ。
減価償却は帳簿上の費用であり、実際に現金が出ていくわけではありません。
そのため、利益が小さく見えて、その年の税金が軽くなるのです。


建物簿価の決め方

減価償却を計算するには、まず「建物の金額(簿価)」を決める必要があります。

  • 売買契約では、土地と建物の価格を分けて記載します。
  • 個人間の取引では、売主の固定資産税課税明細書に記載された比率を使って按分するのが一般的(=固都税按分)。

例:売買価格6,000万円、評価額が土地2,000万円/建物1,000万円(=土地:建物=2:1)の場合
→ 土地4,000万円、建物2,000万円。
この「建物2,000万円」が減価償却の対象となります。


減価償却はどうやって計算する?

不動産の建物部分の金額(建物取得価額)を、決められた年数(耐用年数)で毎年同じ額ずつ経費にします。
個人の不動産所得では、基本的に「定額法」を使います。

耐用年数の目安

  • 木造住宅:22年
  • 鉄骨造:19〜34年(部材の厚みによる)
  • 鉄筋コンクリート(RC):47年
    (中古物件の特例や改装の扱いもありますが、まずはこの目安を知っておけば十分です。)

簡単な数字例

  • 物件価格:6,000万円
  • 固定資産税評価などで按分した建物価格:2,000万円
  • 構造:RC(耐用年数47年と仮定)

この場合の年間の減価償却費は
2,000万円 ÷ 47年 ≒ 42.6万円/年(端数は実務上調整)。

仮に税率を30%とすると、その年の税金の軽減効果(目安)は
42.6万円 × 30% ≒ 12.8万円

現金は出ていないのに、税金だけが軽くなるイメージです。


用語ミニ解説

  • 建物の金額(建物取得価額)
     売買価格を土地と建物に分けたときの建物部分の金額。個人間取引では、固定資産税評価額の比率(固都税按分)で按分するのが一般的。
  • 簿価
     帳簿上の残りの価値。減価償却が進むほど簿価は下がっていきます。
  • 耐用年数
     何年にわたって費用化するかを決めた年数。建物の構造によって年数が決まっています。

減価償却が節税になる理由

ここが初心者にとって一番分かりにくい部分です。

税金は「収入 − 経費 = 利益」にかかります。
普通は経費=実際にお金を払ったものですが、減価償却は お金を使っていないのに経費にできる 特別ルールです。

財布の中身で考える

  • 家賃収入:100万円
  • 実際の経費(管理費など):20万円
  • 減価償却:30万円

このとき──

  • 帳簿上の利益:100 − 20 − 30 = 50万円
  • 実際の手残り(現金):100 − 20 = 80万円

つまり、財布には80万円あるのに、税金は「50万円の利益」として計算されるのです。

税率30%なら、

  • 減価償却あり → 税金は15万円
  • 減価償却なし → 税金は24万円

差は9万円
これが「減価償却で節税できる」と言われる理由です。


減価償却は魔法ではない

ただし、減価償却を「節税の魔法」と誤解するのは危険です。
実際には、課税のタイミングを後ろにずらしているだけだからです。

売却時に跳ね返る

減価償却を進めると、建物の簿価はどんどん下がります。
売却時には「売却価格 − 簿価」が利益になるため、簿価が小さいほど売却益は大きくなり、課税額も増えます。

→ 減価償却で“得した分”は、売却時にまとめて課税されるイメージです。

銀行融資への影響

さらに、減価償却を大きく取ると帳簿上の利益は小さくなります。
銀行によっては「赤字決算が続いている」と判断され、次の融資審査に不利になることもあります。


まとめ

  • 減価償却は「お金を使わずに経費を作れる」仕組み
  • その年の税金を軽くし、キャッシュフローを改善できる
  • ただし、売却時に課税が増える点や融資評価への影響には要注意
  • 短期の節税と長期の出口戦略をセットで考えることが大切

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減価償却はキャッシュフローを守る大きな武器ですが、出口戦略や融資評価まで考えると「どう判断すべきか」は人それぞれです。

  • 減価償却で本当に得できるのか?
  • 売却時の税金をどのくらい見込むべきか?
  • 銀行評価に影響しないか?

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では、またひみつ基地で!

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