はじめに 「最近、家賃が上がったって話、よく聞きませんか?」
ここ数年、食品・光熱費・人件費など、あらゆるモノの値段が上がっています。
不動産も例外ではなく、賃料(家賃)が上昇しているというニュースや身近な話を耳にする機会が増えました。
特に都市部や人気エリアでは、インフレや建築コストの高騰が重なり、家賃を上げやすい市況になっています。
不動産投資をしている人にとって、これは利回りを底上げするチャンスです。
ただし、賃料改定はそう簡単なものではありません。
借地借家法では、借主の権利が非常に強く、交渉はお願いベースになるのが実務です。
この記事では、不動産投資初心者でも分かるように、法律の建前と現場の現実、そして賃料改定の進め方を解説します。
1. 賃料改定とは? 初心者がまず知っておくべきこと
賃料改定とは、契約期間中または更新時に家賃を見直すことです。
相場の変動や物件価値の向上に応じて、増額(値上げ)または減額(値下げ)が行われます。
不動産投資では、賃料改定=収益改善の即効薬。
同じ物件でも家賃が上がれば、利回りが一気に改善します。
2. なぜ今、賃料を上げやすいのか?
- インフレの影響:物価上昇とともに家賃相場も上昇傾向
- 新築コスト増:建築費や土地価格の上昇で新築家賃が高騰 → 中古相場も引き上げられる
- 人口動態:都市部や人気エリアに人が集中
- 需給バランス:供給不足のエリアでは多少高くしても決まりやすい
この追い風を利用できれば、収益改善はグッと現実的になります。
3. 借地借家法と賃料改定の現実
賃料改定の法的根拠は借地借家法32条です。
賃料が不相当となったときは、貸主または借主は将来に向かって賃料の増減を請求できる。
しかし実務では、以下の理由から借主側が圧倒的に有利です。
- 法律の基本理念が借主保護
- 裁判になると1〜2年かかり、費用も負担
- 認められる増額幅は数%〜10%程度が多い
- 更新拒絶や退去強制には厳しい正当事由が必要
つまり、「権利はあるが、強制的に上げるのはほぼ不可能」。
ほとんどのケースは借主が納得する形での合意を目指します。
4. プロもやっている賃料増額交渉
これは個人オーナーだけの話ではありません。
大手不動産ファンドやREITでも、ここ数年は契約更新時に一律で賃料交渉を行うのが標準運用です。
- 全物件・全入居者が対象
- 更新時に必ず相場調査を行い、改定余地があれば提案
- 成功率は感覚的に半々
- 成功すれば長期的な賃料水準が高まり、収益改善効果は大きい
プロも「成功すれば利益、失敗しても現状維持」という感覚で、数を打って成果を積み上げています。

引用:アドバンス・レジデンス投資法人2025年1月期決算説明会資料
このように大手住宅系REITでも当然のように更新時には賃料増額交渉をしています。
5. 賃料改定の狙い目タイミング
- 契約更新時
- 契約書に賃料改定条項があればスムーズ
- 更新は条件見直しの自然なタイミング
- 退去後の再募集時
- 新規募集は完全に相場ベースで設定可能
- 設備改善と組み合わせれば大幅アップも可能
- 設備グレードアップ時
- 共用部リノベ、エアコン追加、ネット無料化、収納改善などで価値を上げて改定交渉
6. 管理会社を活用する
初心者が直接入居者に交渉すると、関係が悪化するリスクがあります。
そこで活用したいのが管理会社です。
- 事前協議
- 周辺相場や過去実績から改定幅を相談
- 更新・退去・設備改善などベストなタイミングを決定
- 窓口を任せる
- 入居者への説明・交渉は管理会社が担当
- オーナーは条件と方針を明確に共有
- 根拠資料を提供
- 相場比較表や物価上昇データを渡し、説得材料に
7. 賃料改定を通しやすくするコツ
家賃の値上げは、ただ「上げたい」と言うだけでは通りません。
借主が納得できる根拠と、受け入れやすい条件をセットで示すことが大切です。
次の4つを押さえると、成功率がぐっと高まります。
① 数字で裏付ける(根拠の見える化)
なぜ必要か
感覚的な説明よりも、客観的な数字の方が説得力があります。
どうやるか
- 同じエリア・間取り・築年数の物件賃料を3〜5件調査
- 一覧表にまとめ、現在の賃料との差を明示
- 「同条件物件の平均は◯円高い」という事実を示す
注意点
最新のデータを使うこと。古い相場は逆効果です。
② 理由は「入居者のメリット」に変換して伝える
なぜ必要か
値上げはマイナスの話なので、プラス面を感じてもらうことが重要です。
どうやるか
- 設備改善やサービス追加を説明(例:新しいエアコン導入、ネット無料化、防犯カメラ追加)
- 周辺環境の向上をアピール(例:駅前に新しいスーパーができた)
- 共用部や外観の改善を見せる
注意点
物価上昇や固定資産税増加は直接言わず、「それに対応するための改善」という形で伝える。
③ 無理のない上げ幅で提案(段階的改定も検討)
なぜ必要か
一度に大きく上げると拒否されやすくなります。
どうやるか
- 相場との差が大きくても、まずは半分程度で提案
- 更新ごとに少しずつ引き上げる
- 「今回は+3,000円、次回も相場に合わせて再検討します」と事前に説明
注意点
強気に出すよりも、小幅を積み重ねた方が長期的には効果大です。
④ 近隣相場を示し「引っ越しても高い」ことを伝える
なぜ必要か
「もっと安いところに引っ越せばいい」という選択肢を現実的でないと感じてもらうためです。
どうやるか
- 周辺の最新募集賃料を調査し、現家賃と比較
- 「同じ条件なら今は◯万円前後します」と具体的に提示
- 引っ越し費用も加えると、現状維持の方が得だと分かる
注意点
高いから我慢して、という言い方は避け、あくまで冷静な事実提示+今の部屋の利点をセットで伝える。
この4つを意識すると、入居者も「理由が分かるし、条件も悪くない」と感じやすくなります。
管理会社に交渉を任せる場合も、この4点を事前に共有しておくと成功率が高まります。
まとめ 初心者大家さんでもできる家賃値上げ
- 今はインフレや需給の偏りで家賃を上げやすい市況
- 借地借家法に注意し、あくまでもお願いベースの交渉
- 不動産運用のプロも更新時交渉を標準化(成功率は半々)
- 管理会社と組んで根拠を揃え、タイミングを逃さず実行
「最近、家賃上がったって話」をあなたの物件でも実現してみてください。
不動産投資に関するご相談・賃料改定の戦略立案は、こちらからお気軽にどうぞ。
では、またひみつ基地で!
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