退去で失敗しない「初動の対応」

運用戦略

テナントからの解約予告──これは「収益が一時的に止まるサイン」であると同時に、「次の収益源を作るチャンス」でもあります。

不動産オーナーとして、管理会社に任せきりにせず、主体的に動くことで空室期間を最小化し、より良い条件で次のテナントにつなげることが可能です。

この記事では、テナントからの解約予告を受けてから原状回復、そして次の契約までの流れを実務ベースで解説します。


解約予告が出たときの全体フロー

  1. 解約予告を受け取る
  2. 契約書を再確認する
  3. 募集条件を決める
  4. 退去立ち会いを行う
  5. 原状回復工事費を決定する
  6. 新しいテナントと契約する

解約予告を受け取ったら最初にやること

まずやるべきは賃貸借契約書の再確認です。慌てず、冷静に以下のポイントを確認しましょう。特に、中古物件を買った場合は前オーナーが締結した賃貸借契約を引き継ぐことになるので、きちんと内容を把握しておくことが重要。

  • 解約予告期間:一般的には1〜2ヶ月前の通知が多いですが、契約により異なります。
  • 原状回復の範囲:どこまでテナント負担か、クロスや床はどう扱うか。
  • 特約条項:退去時にクリーニング代(例えば「3万円+税」)を請求できるケースが増えています。

これらの確認を元に、退去スケジュールや費用負担の見通しを立てましょう。


募集条件の設定はスピード勝負

次のテナントを早期に確保するため、募集条件の決定は最優先事項です。ダウンタイム(空室期間)の最小化はプロの運用会社も最重要視する部分です。

条件設定時のポイント:

  • 賃料の相場調査
    • SUUMO、ホームズなどのポータルで近隣の類似物件を検索
    • 管理会社や地場仲介会社の意見もヒアリング
    • イタンジやレインズなど業者が使うサイトの過去成約事例を管理会社から貰えるとより正確になる
  • 賃料だけでなく総合的な条件設計
    • 敷金・礼金・更新料のバランス
    • 入居期間の想定や法人契約の可否など
    • ペット可や楽器演奏可などの特殊条件も検討
  • 利回り重視なら賃料寄せが有利
    売却時の見栄えを考慮し、賃料を高めに設計することで表面利回りが良くなります。
  • リニューアル工事の検討
    内装や設備を刷新して坪単価アップを狙うことも可能。原状回復と併せて一気に対応するのが効率的です。

退去立ち会いには工事業者も呼ぼう

退去時の立ち会いは、通常テナントと管理会社で行われますが、原状回復工事を担当する業者にも同席してもらうのがベストです。

  • 現地で劣化や損傷の程度を確認し、その場で見積りが出せる
  • 管理会社は「管理のプロ」ですが「工事のプロ」ではないため、専門的な判断は業者の方が正確

結果として、工事内容のすれ違いや追加工事のリスクが減ります


原状回復工事費の決定と注意点

原状回復費用は、トラブルになりやすいポイントのひとつです。

基本的な考え方:

  • 賃借人の過失による損傷:テナント負担
  • 経年劣化や通常使用による摩耗:オーナー負担

加えて、契約書であらかじめ定めたクリーニング代などは、特別な事情がない限り請求可能です。

トラブル回避のコツ:

  • 工事見積は複数業者から相見積もりをとる
  • テナント同席のもとで見積りを説明すれば納得感も得やすい
  • 言いがかりに対しては、契約書を根拠に冷静かつ淡々と対応するのがベストです

新規テナントとの契約までの流れ

原状回復工事の完了予定が見えてきたら、内見の受け入れと申込み受付を開始しましょう。

  • 写真撮影・募集図面の作成はできるだけ早く
  • 申込みが入ったら、**属性確認(職業、保証会社、法人なら信用調査)**を行う
  • 個人なら勤務先や収入、連帯保証人の有無を確認。法人の場合は帝国データバンクや商業登記簿を用いた与信チェックも視野に
  • 契約条件のすり合わせを経て、賃貸借契約書を締結

募集から契約締結までを2〜3週間以内に完結できると、空室リスクを最小限に抑えられます。


実務でよくあるトラブル例(補足)

  • 退去立ち会いの日程が直前で変更され、次の工事スケジュールがズレた
  • クリーニング代を「汚していない」と主張されて拒否された
  • 設備破損を「経年劣化」と主張されたが、実際は使用上のミスだった

こうした事例でも、契約書をベースに冷静に対応すれば、多くは解決できます。感情的なやり取りは避け、淡々と記録を取りましょう。


まとめ:退去対応は不動産経営の本丸

テナント退去は、手間もトラブルも多いイベントですが、それ以上に次の収益を生み出す重要なタイミングです。

管理会社に任せきりにするのではなく、オーナー自身が判断し、行動することで、より有利な条件で再スタートを切ることができます。

退去対応は不動産オーナーにとっての「腕の見せどころ」。主体的に動くことで、経営力は確実に磨かれていきます。今後の退去に備えて、いま一度、保有物件の賃貸借契約書を見直してみるのもおすすめです。

それでは、またひみつ基地で!

コメント

タイトルとURLをコピーしました