はじめに──価格ではなく「状況」で売り時を判断する
不動産投資で「いつ買うか」はよく議論されますが、「いつ売るか」は体系的に語られることが少ない。 けれど、出口判断こそが投資の成否を大きく左右します。
多くの投資家がやりがちなのが、 「もう少し高くなるかも」「今売ったらもったいない」──この先延ばしです。
でも、はっきり言えば、市場の天井がどこかなんて誰にもわかりません。 自分が高値だと思っても、翌年さらに上がることも、半年後に暴落することもある。
価格は“売る覚悟ができた後に最後に背中を押す材料”でしかない。
本当に重要なのは、**「自分の状況が売るべき状態に入っているかどうか」**です。
今回は、その判断軸を不動産投資のプロが整理します。
1. 減価償却が終わったとき
不動産投資の節税メリットの柱が「減価償却」です。ただしこれは永遠に続くわけではなく、建物の耐用年数で使える期間が決まっています。
たとえば木造新築の法定耐用年数は22年。中古だと残存年数はさらに短く計算されます。
【具体例】
- 物件価格:3000万円(うち建物1500万円)
- 減価償却期間:10年
- 年間減価償却:約150万円
- 税率30%なら、毎年約45万円の節税効果
これが償却終了とともに消え、税引き後の手残りがガクンと減っていきます。節税効果が尽きたタイミングは、売却を検討しやすい一つの節目です。
2. 大規模修繕が迫っているとき
築年が進むと、外壁塗装・屋上防水・給湯器・設備交換など、数十万〜数百万円単位の修繕費が発生します。
このときの考え方は2つあります。
- 修繕前に売る
- 次の買主がリスクを引き受ける分、価格はやや控えめになるが自分は出費を回避できる。
- 修繕してから売る
- 見た目の印象・安心感が高まる分、高値で売れる可能性もある(ただし修繕費は自己負担)。
どちらが良いかは物件次第ですが、高額修繕が控えているのは売却検討のきっかけになりやすいポイントです。
ちなみに、修繕工事の目安単価はこちらの記事でまとめています。
3. より良い投資先が見つかったとき
「今の物件が悪いわけではないが、もっと条件の良い投資先が現れた」──こんなときは資産を入れ替える出口判断が合理的です。
- 借入余力をうまく活用できる新案件がある
- エリア戦略を変えたい
- ポートフォリオ全体の組み直しを図る
目的は「売ること」ではなく**“より良いリターンの追求”**です。
4. 5年超の長期譲渡に切り替わったとき
不動産売却益には「短期譲渡」「長期譲渡」で税率が大きく違います。
- 5年以下の短期譲渡:税率約39%
- 5年超の長期譲渡:税率約20%
売却時期を少し調整するだけで税負担が半分近く変わるケースもあります。5年超えは売却しやすい節目になります。
※法人で保有している場合は短期・長期の区分はありません(売却益は通常の法人所得として課税されます)。
5. 相続や贈与の準備をするとき
資産承継や納税資金の準備、遺産分割を考えたとき、現金化しておく方がスムーズな場合も多いです。
- 相続人間で揉めにくい
- 不動産特有の流動性リスクを回避できる
- 老後の生活資金に充当する
税理士・家族との相談を踏まえた資産整理として売却を選ぶケースも実務ではよくあります。
6. 運営の負担が限界にきたとき
空室対応、修繕対応、賃借人トラブル……管理ストレスが想像以上に重くなることもあります。
「もう疲れた」「そろそろ不動産から少し離れたい」──そう感じ始めたら、無理に耐え続ける必要はありません。
不動産投資は、本来あなたの生活を豊かにするための手段です。投資に振り回されてストレスを抱え続けるくらいなら、一度手放して整理するのも十分合理的な判断です。
おわりに──売却判断は「先延ばししない整理」がカギ
売却タイミングは価格だけではなく状況整理で決めるもの。減価償却・修繕・税金・投資機会・相続・ストレス──定期的に**「自分の出口タイミングは近づいていないか?」**を棚卸しする習慣を持ちましょう。
なお、売却を決断した後は「どれだけ高く売れるか」も重要になります。具体的な準備方法はこちらの記事で詳しく解説しています 。
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売却のタイミングに悩んでいる方は、まずは現状を一緒に整理するところから始めてみませんか?
ご相談はお気軽にどうぞ。現場経験をもとに、今の状況に合わせた具体的な選択肢をご提案します。
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それでは、またひみつ基地で!
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