不動産の適正価格を素早く出せますか?
「簡易査定」よりもさらに前の段階。
物件概要書を見せられて、その場でペンと電卓(または暗算)を使い、**「〇〇円までなら買いたい」**と即答できるか――。
この瞬発力が、不動産売買では成否を分けます。
なぜなら、現場では物件情報が出回るスピードも早く、迷っている間に他の投資家に持っていかれるケースが多いからです。
もちろん、契約前には詳細な調査や精緻な収支シミュレーションが必要です。
しかし、この記事でお伝えするのは枝葉をすべて飛ばし、“瞬間的に概算を出す”ための現場手法です。
前提は1棟アパート(レジデンス)。これは不動産取得のプロが現場で最初に叩き込まれる、スピード査定の基本型です。
1. スピード査定の基本は「収益還元法(直接還元法)」
基礎となる考え方は収益還元法の一つ、直接還元法です。
計算式は非常にシンプルで、
価格 = 年間収入 ÷ 期待利回り
この2つの要素、「年間収入」と「期待利回り」を素早く押さえることで、瞬時に価格の目安が出せます。
2. 年間収入は“70%ルール”で早出し
まず概要資料の「年間想定収入」を確認します。
そこから経費分を差し引くため、×70%をして「想定NOI(純収益)」を出します。
この70%という数字は、経費率を30%と仮置きしたものです。
経費には管理費、修繕費、空室損、広告費、火災保険料、固定資産税などが含まれます。
- 賃料単価が高いエリアでは経費率は比較的低くなる傾向
- 賃料単価が安いエリアでは経費率は高くなりやすい
普段から狙っているエリアの物件資料を複数チェックし、経費率の感覚を頭に入れておくことが、この工程の精度を左右します。
3. 期待利回りを現場で即調べて当てはめる
次に、近隣の投資用物件の利回りを調べます。
楽待や健美家などのポータルサイトで、築年数・構造・立地が近しい物件を絞り込み、掲載されている「ネット利回り(経費控除後)」を確認します。
例:
- 年間想定収入:600万円
- NOI(70%):420万円
- 近隣ネット利回り:5%(0.05)
- 仮価格 = 420万円 ÷ 0.05 = 8,400万円
この数字が、“おおよその価格”です。
この価格水準をその場で伝えられるかどうかで交渉のスピード感が変わります。
ちなみに利回りの考え方はこちらの記事でも詳しく説明しています。
4. 専有単価で価格の妥当性をダブルチェック
仮価格が出たら、仮価格 ÷ 専有延床面積で専有単価を算出します。
次に、スーモやHOME’Sで近隣分譲マンションの単価を調べて比較します。
例えば、分譲マンションの方が仕様が良いにも関わらず、木造アパート単価が分譲より高い場合は価格を高く出しすぎているかもしれません。
専有単価は簡易的に価格の妥当性をチェックするのに向いています。
5. スピード査定の落とし穴と歪みへの対策
収益還元法の最大の弱点は、賃料設定の難しさと利回り設定の難しさです。
特に投資用物件は、分譲マンションと比べると販売事例が少なく、極端な事例1つで査定が歪むこともあります。
そこで有効なのが専有単価のダブルチェックです。
「収益性」と「相場単価」という2つの視点で見ることで、数字の過信を防げます。
まとめ──スピードは最大の武器
この流れを頭に入れておけば、物件概要書を渡された瞬間にこう動けます。
- 年間想定収入を70%にしてNOIを出す
- 近隣ネット利回りで割り戻して価格を出す
- 専有単価でマンションと比較してズレを確認
わずか1分で「この価格までなら買える」という答えを出せれば、交渉もスムーズになり、良い案件を逃さなくなります。
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では、またひみつ基地で!
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