はじめに
「空室ゼロで30年家賃保証します!」
こんな甘い響きの提案を、不動産業者から受けたことはありませんか?
安定収入が約束され、面倒な管理も不要──聞けば聞くほど魅力的です。
でも、その裏には「思っていたのと違う…」と後悔する人たちがいることも事実です。
私は、不動産の現場でサブリース契約の成功例と失敗例を数多く見てきました。
この記事では、将来後悔しないために、サブリースの仕組み・光と影・契約前の必須チェックポイントをお伝えします。
自己紹介と実体験
私は長年、不動産の売買や運用に携わってきました。
知り合いの富裕層オーナーの中には、サブリース契約を賢く使い、ほぼ手間をかけず安定した家賃収入を得ている人がいます。
しかし一方で、サブリース業者と条件変更をめぐって裁判に発展し、物件の価値が大きく下がってしまったケースの仲介を担当したこともあります。
同じ「サブリース」でも、契約内容と相手によって、結果は天国と地獄ほど違うのです。
サブリース契約とは?
サブリースとは、大家が物件を一括で業者に貸し、業者が入居者に又貸しする仕組みです。
大家は空室や家賃滞納を気にせず、毎月一定額の“保証家賃”を受け取れます。
ただし、この保証家賃は相場より低く設定されるのが一般的(当然といえば当然ですが)で、しかも30年間ずっと同額ではありません。
契約書にはたいてい「数年ごとに見直しあり」と書かれています。

メリット
- 空室リスクを回避できる
入居者がいなくても家賃が振り込まれる安心感があります。 - 管理業務を丸投げできる
募集、家賃回収、クレーム対応などをすべて任せられます。 - 融資条件が有利になる可能性
「安定収入」と評価され、銀行ローンが通りやすくなる場合があります。
デメリット
- 家賃減額の落とし穴
更新時や相場下落時、保証家賃が大幅に下がることがあります。 - 中途解約がほぼ不可能
違約金が高額、または契約期間中は解約できないケースが多くあります。 - 利回りの低下
保証家賃が低く、管理費なども差し引かれるため、実質的な収益性は下がります。 - 修繕費用の想定外負担
室内設備の交換や原状回復までオーナー負担になる契約もあります。 - サブリース業者は法律上“借主”として守られる
サブリース契約では、業者は借地借家法の「借主」にあたります。
この法律は入居者の権利を守るために非常に強く、借主の合意なく一方的に契約を解除したり、条件を大幅に変更することは原則できません。
つまり、たとえ業者との関係が悪化しても、法的に守られている借主側の方が立場が強く、オーナーは自由に契約を終わらせられないのです。

引用元:日本経済新聞 サブリースに潜むリスク アパート経営でトラブルも
条件は相手次第で変わる
サブリース契約は、同じ物件タイプでも相手によって条件が変わります。
- 富裕層・大口オーナー:継続的な取引を期待され、保証家賃が高く、減額幅も小さい。
- 初心者・単発契約:足元を見られやすく、保証家賃が低く、条件変更も業者有利に。
実際に、同じエリアの同築年数の物件でも、富裕層は相場−10%、初心者は相場−20%という事例を見ています。
つまり、業者は契約相手の将来性を見て条件を決めているのです。
契約前のチェックポイント
1. 家賃減額の条件と基準が明記されているか
保証家賃が下がる場合、その条件が契約書に明確に書かれているか確認しましょう。
「相場の変動に応じて〇%まで」など基準が具体的なら安心ですが、「業者の判断による」とだけ書かれていると、一方的な減額を許すことになります。
2. 中途解約の可否と違約金の有無
契約途中で解約できる時期、違約金の有無と金額を確認しましょう。
制限が厳しすぎると、条件が悪化しても動けなくなります。
3. 修繕・原状回復の負担範囲が明記されているか
共用部の修繕は原則オーナー負担ですが、室内の修繕や設備交換の負担者は契約によって異なります。
何から何までオーナー負担になっていないかを確認し、負担範囲がはっきり書かれていることが重要です。
4. 保証家賃と相場の差
周辺相場と比べてどのくらい低いかを調べましょう。
目安として相場より15%以内なら許容範囲ですが、それ以上低い場合は収益性に注意が必要です。
5. 更新時の再交渉可否
契約更新時に保証家賃や条件を見直せるかを確認しましょう。
「双方協議」となっていれば交渉の余地がありますが、「業者提示条件のみ」となっている場合は不利になりやすいです。
まとめ
サブリース契約は、正しく使えば手間を減らし安定収入を得られる仕組みです。
しかし、契約条件や相手を見極めずに進めれば、長期間低収益に縛られるリスクがあります。
特に、法律上業者の立場が強くなるため、長期的に付き合える信頼できる業者を選ぶことが絶対条件です。
契約後は同じ船に乗るようなもので、途中で降りるのは容易ではありません。
大切なのは「相場と契約条件を正しく知り、業者の信用度を見極めた上で判断する」こと。
知識と準備があれば、この仕組みは味方になります。
契約に不安がある方へ
契約条文や条件は、経験者の目で見ればリスクの有無がすぐに分かります。
「提案を受けたけど本当に大丈夫?」という方は、一度ご相談ください。
では、またひみつ基地で!
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